<Czech Republic/UK 2004>

Directors: Vit Klusak, Filip Remunda
Synopsis & Comment:
プラハ、2003年。映画学校の生徒二人によるドキュメンタリー。
架空の巨大スーパー(大陸ではハイパーマーケットと言うことが多い)”Czeck Dream”を、メディアを使って大々的に宣伝。人々がそれにどう反応するのか、オープニングに押しかけるのかという実験。
テスコなどから広告宣伝料を調達して映画を製作。高級紳士服のBOSSは、店員が自分のスーツの内側のBOSSのロゴを数秒カメラにとらえさせて宣伝させてました…。
プロの広告会社もこのドキュメンタリーに参加して、スーパーのロゴや、ポスター作りがスタート。キャッチフレーズやチラシの効果を科学的に分析したり、モニターを募って調査・インタビューするところは、MBAのマーケティングの授業を彷彿させるなかなかのもの。消費・資本主義に染まっていく現代チェコの消費動向を、ユーモアを交えて伝えてくれます。
テレビコマーシャル、街中のポスター、家庭に配られたチラシなど、宣伝は着々と進み、ついにオープニング当日。
不安をよそに、当日は2000人以上が朝早くから押しかけ、スーパーとおぼしき建物(ただの平面だけ)から数百メートル離れたバリケード前で待機。オープニングセレモニーを経て、バリケードが取り外されると、人々は”チェコ・ドリーム”に向かって歩きだす(走り出す)!
しかし、そこにあると思った建物はタダの骨組み。まったくのでたらめだったとわかっての反応は人それぞれで、人をばかにするものではないと憤慨する人もいれば、政治にあてはめて論じる人、天気がよかったのでピクニックでもするよと楽天的な人も。
私はこういった”どっきりカメラ”ものは好きではないので、多少の不快感があったものの、その後にこの”宣伝”の効果を根拠に、メディアを大々的に利用してEU参加を呼びかける政府を追求するあたりは、このドキュメンタリーの底深さを感じました。
開かれていく”旧東”のチェコが、モノに溢れる”西”に追いつけと、物欲の醜さを人々自身も気がついでいながら、流されてしまう瞬間。もう後戻りのできないグローバリゼーション。
プラハの(世界一大きいという?)巨大ショッピングセンター・テスコのマネージャーは、配給のバナナを求めて長い列にならんだという少年時代の苦労を語り、中でも一番つらかったのは、その様子を日本人観光客のビデオに撮られたことだとコメント。なんとも心痛し…。
★★★☆☆